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新婚なの! 13-6 (2)

 なのはに連絡を取ると、「え~、忙しいんだけどなあ」とかなんとか言って、でも声は完全に踊ってて、最後には嬉しそうにレポートを送ってくれた。
 初めに考えたときは、用件だけ伝えて、さっさと切り上げるつもり――だって、書き直さなきゃいけないし――だったのに。さっきの話がちらついて、長々となのはの話に付き合ってしまった。
 なのはは、教え子のこと、どのくらい覚えているだろう。
 教導隊が受け持つ多くは、長期に及ぶことは少ないから、その分、生徒数はかなりの数になる。
 だから、覚えきるのは難しいだろう。
 でも、結構な数を覚えているはずだ。
 だから、だから――きっと、あの名簿を、羅列されるだけになってしまった局員たちを見たら……考えたくもない。
 そのこともあって、なのはの楽しそうな声を聞いてたら、通信を切る手が動かなかった。

「昼は後回しにして、先にレポートを仕上げないとな」

 皆が出かけて、また人気の無くなったオフィスで一人、タイプを打つ。
 元々、提出用に書かれたものだから、それほど書き直すところもなくて、正直思ったより楽なものだった。なのはだって、ちゃんと仕事してるんだから、当たり前なんだけど……これは黙っていようっと。
 ただ、レポートの文面から、先のなのはの映像が蘇ってきて、何度も手が止まってしまったのが、難儀といえば難儀だったけど。
 出来るだけ、アタシが見て考えて、客観的に書いた風を装って、モニタを閉じた。きっと、はやて達の学校の宿題って、こういう感じだったんだろうな。

「一人で食べるのも、味気ないな」

 弁当を作ってないから、食堂で済ませる日々が続いている。
 今までだって、そういう機会は何度かあったけど、何故かそんな風に思ったことはなかった。
 いや、味気ないってのは一人で食べることで、決して食堂で食べることとか、食堂のランチがどうこうって意味じゃなくて――なに言ってんだ、アタシは。
 ……そう言えば。アタシが弁当食べてないってことは、なのはも弁当食べてないんだよな。アイツ、自分のを作っていった気配もないし、多分そうなってるはずだ。

「ちゃんと食ってんのかな」

 ぽつりと、こぼれた。
 元々、なのはがちゃんと食べるか心配っていうか、なんていうか……まあ色々あって作るようになったんだから、アタシが作らなけりゃ、食べてるか心配になるよ……な?
 朝ご飯も作ってくれたし、先に一人分の食器が乾燥棚に置いてあったから、少なくとも朝ご飯は食べているはず。
 そうだ。今も、昼ご飯食べてるかって……いや、聞くのも変か。あれ以上、話が弾むのもヤバイし、今のアタシだと、なんか勘付かれそうで心配な気もするし。
 うん。これは、今日の夜に帰ってから、それとなく聞いてみることにしよう。

「あ、しまった。医務室にいくの忘れてたや」

 そんな独り言に、誰も構ってくれやしない。改めて、一人なんだなって、思わされた。いつも、頼んでもないのに付き纏ってくるし、元々さ、賑やかな家族だったから、こういうのって、慣れてないんだ。
 一人だな、そう思ったら――なのはの顔が浮かんできて、朝言われたことを思い出した。
 確かに、晩のことを考えれば、やっぱり行ったほうが良いのかもしれない。けど、昼ごはんは普通に食べられたし……
 なのはの顔を思い出したら、気持ち悪くなってきた。
 胸の辺りが、苦しい。

「やっぱり行こう。何かあって、怒られるのも嫌だし」

 子供みたいな理屈だ。
 身体が資本の仕事なんだから、そういうことじゃないって言うの、口を酸っぱく言ってきた側なのに……
 溜め息が漏れる。
 空になった皿の乗ったトレイを持ち、返却口に向かった。


  ◆


 医務室では、先生に会えなかった。
 大体、どこもどの時間も医者は忙しいもので、ここ数回、毎度顔を会わせていたのは、運が良かっただけということ――先生の好意かも知れないけど――を、すっかり失念していた。
 怪我人とか、大勢担ぎ込まれたんだろうか。
 アタシとしては、急を要することはなかったし、昨日の今日で具合が悪いなんて言うと、何を言われる分からない。
 今日のは、運が良かったと、そういうことにしておこう。
 そうやって理屈をつけて、オフィスへの帰り道を急いでいると――

「――ん?」

 相変わらずの、往来の激しい中。見知った頭を見た。
 茶色のサイドポニーに、青を基調とした制服。見慣れた足取りに、雰囲気――
 間違いない、間違えるわけがない。この目に焼きついて、忘れようたって忘れられない、その姿。
 今度こそ。この間とは違う、絶対にそうだ。
 だけど……なんでだ? だって、今日は――
 今、ここにあるはずのない光景に、アタシの頭はぐるぐると渦を巻き始めた。

「……こっち、こっちだよな」

 頭は判断を保留している――いや、判断出来ないでいるだけか――にも関わらず、足は、勝手に"なのは"の影を追うために動いていた。
 いや、もう判断は出来ているのに、迷っていると、違うんじゃないかと思っているだけなのかもしれない。
 どちらにせよ、何かに惹かれるように、牽かれるように往来に逆らって、アタシは歩いていた。
 見失っても、何故か、方向だけはわかる。どちらに進めば良いのか、それが分かる。
 何かにひかれている、それが内面からの働きかけというよりも、現実の力として、現れているような気がしていた。

「……港じゃないか」

 ひかれるまま、足の動くままに任せていると、大小、様々な艦が並び、本局で一番ぐらいに人の往来が激しいドッグに出た。
 ここへ、なのはは来たはずだ。
 さっきまで、疑惑だったそれは、いつの間にか確信に変わっていた。
 どこだ、どれだ?
 人を避けながら、首を伸ばし、かかとを上げて、その隙間から探し出そうとするけれど、さっぱり見当たらない。
 こんなときにまで、なのはとの事を邪魔されているようで、子供みたいに、小さなこの身体が疎ましい。
 くそ。なんだってこんなときまで――

「そんなところで、こそこそなさらずに、もっと近寄ってみたら如何ですか? アイドルを追いかけているわけでもあるまいし」

 突然の声に、心臓が口から飛び出すかと思った。

「な、ななななんでお前がここに!」
「そんな大声出すとバレますわよ、隠れているんでしょう?」
「だ、だまれ! それより、どうしてお前がここに!」
「優先事項を間違えてはいけません。今は私に構っている場合ではないでしょうに」

 仕方のない人――そう言わんばかりの顔をして、アタシの首根っこを掴むと、壁に沿って、ずんずんと歩き始めた。
 あきれ返りながらも、何だかんだアタシを気にかけている、と暗に言っているような口調だった。でも、アタシは無視したけど。本当に"今は構っている場合じゃなかった"から。
 しかし。
 どうしてコイツがここにいるんだ? 幾らなんでも変だ。
 いつも、何かとアタシの前に現れる。しかも、全く前触れもなく、気配を覚られることもなく。
 影のように付き纏っては、事あるごとに、事態を引っ掻き回す。
 でも、それにしては――
 突然、メンテの足が止まり、首根っこを押さえる手の力が緩んだ。尻餅をついて、思考が一旦中断されてしまう。

「ほら、あそこですわよ。ヴィータさん」
「な、なに、どこだよ」
「ほーら、あそこ。同じような艦が並んでますけど……見えないようなら、肩車しましょうか? ちなみに、私の肩車はまさに天にも――」
「必要ない」
「あら、そう。では、目的の艦は、右から……三番目です」
「……あれか」

 指差す先。視線が往来を縫って、その先に見つけた艦。それは現在、管理局の次元航行隊の主力艦だった。
 チラリと、脳裏にある人物の影が過ぎる。
 直ぐに否定する。
 バカバカしい。主力艦なんだ。それに乗っている人が多いってだけじゃねーか。それだけを取り上げて、どうこう言うなんて、馬鹿げてる。
 そうだ、そうだよな。だから、それだけで特定するなんて――

「連絡、とってみたら如何ですか?」
「誰にさ」
「旦那様にです」
「なんでだよ」

 横目で見つめた顔に、ニヤケ笑いが張り付いていた。

「今日は、本局にいらっしゃらないのでしょう? 次の教導の打ち合わせのために」
「あ、ああ、そうだったな。そ、それならだ、さっき電話したぞ。レポートを貸して――いや、なんでもない」
「今のは聞かなかったことにします。さて、ヴィータさん、なにを戸惑っているのです?」
「アタシが、なんだって?」

 視線は交わらない。

「どうして出来ないのです? 若しかして、したくないのですか?」
「なんでさ」
「今、私たちが追っているのが、"本物の高町なのは"だと、はっきりしてしまうからです」
「…………」
「ヴィータさんは違う、そう思ってらっしゃるのでしょ? そして、それが否定されるのが怖い。違って?」

 挑発しているのが分かる。
 分かる、分かるんだけど……ちくしょう。
 ――そうだ。
 なのはが、ここにいる訳ないんだ。
 だって、今日は現地で打ち合わせがあって、さっきだって……
 だから、アタシが「どこにいるんだ」なんて、的外れなことを聞いて、なのはは不思議そうな顔して、笑ってくれるはずなんだ。
 そうだ、そうだ……

「……一寸、黙ってろ。いいな」
「ええ。楽しみにさせていただきます」

 通信ボタンを、押す指が震える。
 指を乗せ、キーを押し込むだけなのに、どうしようもなく動かない。
 心臓が、身体中がそうなってしまったみたいに、ドキドキと鳴り響いてうるさい。
 口の中が渇く。粘ついて、舌がまとわりつく。
 ぐらぐらと視線が揺れて、真っ直ぐ立っているのか、それすら分からない。
 それら、湧き上がってくる不快感に、立っていられない。
 アタシは、本当は――分かってるんじゃないか?
 こんな風に、すがっても無駄だってこと。なのはに連絡を取っても、アタシの望む結果は得られないって事を。
 でも、それすら――認めるわけにはいかない。
 だって、だって……なのはが、アタシに嘘吐くわけがないんだから。
 そうだ、そうだと言い聞かせ、アタシは、なんとかボタンを押し込んだ。

「…………あ、なのはか?」
「ヴィータちゃん? どうしたの? また」
「ちょっと、出るまで時間あったな。なにか、してたのか?」
「う、うん、ちょっとね。だって、ほら。仕事中だし」
「そうだよな、うん。悪い」

 なのはだ。当たり前だけど。
 だけど、そんな当たり前な光景に、ホッとして、それなのに少しだけ、胸が苦しくなる。
 何かの建物の中にいるようだ。殺風景な背景。
 どこにいるのか、これだけじゃ判断できない。

「どうしたの?」
「ああ、えっと……さっきのレポート、ありがとな。助かった」
「うん、なら良いんだけど」
「今さ、どこにいるんだ? この間、言ってたところか?」
「そ、そう、そうなんだ。それでね、明日から教導に入れそうだよ。えっと……そうだね、うん、それだけ」

 なのはの表情が硬い。
 一体、どうしたんだろうな。
 嫌な考えばかりが浮かんで、アタシの頭の中を駆け巡って、ぐちゃぐちゃにかき乱していく。
 気持ち悪さも、これ以上ないってぐらい、こみ上げてきた。

「そっか。ええっとさ、仕事中に悪かったな」
「ううん、ヴィータちゃん、具合悪そうだけど……大丈夫? 顔色、悪いよ」
「気にすんな。ちょっと寝不足がたたってるだけだから」
「そういう問題じゃ……あ、ちゃんと医務室行った? また、我侭言って――」
「大丈夫だって。ちゃんと行ったから」
「ホント? それなら良いんだけど……そ、それじゃあね。ヴィータちゃん」

 控えめに手を振るなのはに、なんとか小さく応えた。
 心配そうに、何かの様子を窺うようにしながらも、どこか話を切り上げたがる雰囲気に引っかかりを覚えたけど、これ以上顔を見てられなくて、通信を切った。
 ドッと汗が噴出してくる。
 モニタを切った指が、震えてる。
 息が、犬みたいに浅くなっている。

「ど、どうだ」
「……どうだと言われましても、私にはなんとも」
「なのはは、こっちにいなかったじゃねーか。やっぱり、さっきのは見間違いだったんだ」
「ヴィータさんがそれで良いのなら、構いませんが。しかし」
「まだなんかあんのか!」

 思わず声を荒げてしまう。
 周りに、誰か気にした人がいたかもしれないけど、構うもんか。
 アタシの剣幕にもかかわらず、メンテは涼しい顔を崩すことなく、視線をめぐらす。もったいぶって、焦らすように、ぐるっと。
 そうしている間にも、気持ち悪さは治まるどころか、ますます増していっていく。
 後か後から、湧き上がってきて、昼ごはんを、今にも床にぶちまけてしまいそうだった。
 そんなアタシを、メンテは見下ろし、ニコッと笑うと、

「そうなると、ですね。ヴィータさんは幻覚に見るほど、旦那様が恋しかった。そうなりますね?」
「……今は、そういう冗談に付き合う気分じゃない」
「珍しく、冗談ではないのですが。まあ、恋しかったのは、ヴィータさんだけなのかもしれませんけど」
「……何が言いたい」

 見上げるのは、ホントに、迫力がない。
 今は、それだけに集中できない上に、身体に全然力が入らないんだから。精一杯に、目に力を込めて睨みつけるけど、さっぱり通用してなさそうだった。
 普段からそういうヤツだ。睨んだり怒鳴ったり、全く効果がない。暖簾に腕押しというか。
 それが、今日は余計に感じられた。

「旦那様。高町なのはさんは、意外にそうではなさそう、という話です」
「どういうことだ……おい」
「さっき、余り嬉しそうな顔じゃありませんでしたわね。せっかくお礼を言われたのに。ヴィータさん、そういうこと余り言わないタイプでしょう?」
「…………」
「仕事中でも、以前、ヴィータさんがキスをなさったときは、大変喜んでいらっしゃったと。そう、聞いていますが? そういう方が、知らん顔なさるでしょうか」

 どうだ、と言わんばかりに、自信満々に、アタシを見下している。
 言いたいことは、分かる。
 確かに、なのはの態度は変だった。アタシだって、そのぐらいは、分かる。
 でも、それが何だってんだ。本当に、都合が悪かっただけかもしれないじゃないか。たまには、そういう日だってあるかもしれねえじゃねーか。
 それが、なんだ。お前に、なのはの何が分かるって言うんだ。

「そうですわね。確かに、"都合"が悪かったのでしょうねえ」
「あ、アタシはなんも言ってねえぞ! お、お前、勝手に――!」
「そんなこと、出来るわけないでしょうに。それこそ、教導隊の――あ、出てきましわたよ?」

 話を逸らすな――言いかけて、視線の先を、追ってしまった。
 たっぷりとアタシと睨みあって、すいと動かす視線に、思わず釣られてしまった。まんまと乗せられてしまって、なんて迂闊というか、隣でほくそえんでいるのが、嫌でも分かる。
 見なければ、追わなければ、良かった。
 そこには、今、一番見たくないものが。見たくないと、あり得ないと、あり得る筈がないと強く願ったものが、あった。

「旦那様、やっぱりあそこにいらしたのですね。私、こういうの得意ですから」
「―――」
「それに、ほら。後ろにいらっしゃるの、例の執務官じゃありません? 総務統括官の、娘さんでしたかしら?」
「――――」
「なにやら、深刻な顔をしてらっしゃいますよ? 様子を窺いに行ったらいかがです?」

 雑踏も、様々なアナウンスも、その他多くの、ドッグを埋め尽くす音という音が、なにも耳に入ってこない。
 そんな中で、何故かメンテの声だけが、やけにクリアに、頭の中に直接、語りかけてくるように、それだけが聞こえていた。
 その音を後ろに、視線の、ずっとその先にある光景だけが、世界からくり貫かれたように、まるでそこだけが全てのように、浮かび上がって見える。
 世界が、音を、色を失って、耳障りな声が、見たくもない光景だけが、アタシの全部だった。

「あ~んなに、みつめあってしまって。ふふふ、親友とは聞いていましたが、随分なご様子で」
「―――」
「あらあら、あんな風に抱き合うのって……親友で納まるのかしらねえ? ヴィータさん」
「――れよ」
「え? 聞こえませんでした、なんですって?」
「――まれよ……」
「ヴィータさん、しっかりしてください? 聞こえませんわよ?」
「―――!」

 思い切り、全部を振り切るように、声の限りに叫んだ。


 


 意識を取り戻した、いや、気がついたというべきか、周囲の状況を認識したら、ここ最近見慣れた天井が目に入る――医務室のベッドの上だった。
 いつも厳しい先生は、なにもいわず、帰宅の手配をしてくれた。
 どこの誰だか知らない人が来て、アタシを家まで送ってくれた。
 どういう道順だったか、礼を言ったかどうか、送ってくれた相手の顔すら覚えてない。
 ただ、知らない内に、家のソファーの上に座り込んでいた。

「部屋が真っ暗だったから、驚いたよ?」
「……ああ、悪い」
「夕ご飯、どうする? なにか、食べたい物があれば、作るけど」
「……なんもない。動いてないから、腹も減ってないし」
「でも、駄目だよ、食べなきゃ。ほら、なにか好きな、食べられそうな物。なにか言って? 直ぐに作るから」

 ソファーで、ぼうっと座ってるアタシに向かって、なのはが"いつも通り"の笑顔を向けてくれる。
 ついさっき、フェイトと抱き合ってた時、どんな顔してたんだろう。
 こんな、笑顔だったんだろうか。
 それとも、もっと、もっと……

「テレビでも見てて? その内に、なにか作るから。お腹に優しいので良いよね」
「……ああ。任せる」

 テレビをつけてくれるので、ぼんやりと眺めてみる。
 前に切ったときも、ニュースだったのか? テレビをつけるたびに、ニュースを見ている気がする。
 それについてどうこう考える間もなく、直ぐにテレビは切ってしまった。画面に映ったニュースが、とても、この上なく面白くなかったから。
 なんだよ、今そんなの見たくないんだ。
 このニュースの、触れられない部分で、どれだけの死傷者が出ているかなんて……考えたくもなかった――

「なあ、なのは」
「なあに、ヴィータちゃん」
「……悪い。ちょっと寝る」
「あ、うん……」

 リビングになのはを残し、寝室に引っ込んだ。
 なのはは、もう着替えている。だから、制服は、もうハンガーに吊ってある。毎日着るものだから、物置と化している自分の部屋に置いてないんだ。
 真っ暗な部屋。明かりもつけず、慣れた部屋を歩く。
 何にもぶつかることなく、目的の物の前まで歩き、なのはの制服を手に取った。

「…………」

 抱きしめ、顔を埋め、思い切り深呼吸。
 しばらく、そのままにする。瞼の裏に、脳裏に、様々な光景が流れては、消える。それらが、一回りしただろうか。そっと、制服を元に戻した。
 何事もなかったかのように、ハンガーに吊られている、見慣れた制服。
 "思ったとおり"、甘い、抱きしめたくなるような匂いが、僅かに感じられた。
 流れ去った様々な光景。その中心人物の、明るく眩しい髪の色の、匂いだった。


 


 


 

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