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誰もが持ってる力なんだって



「どうしたのよ、浮かない顔して」

 頬杖をついてため息なんかを吐いちゃってるなのはに、アリサは内心ニヤニヤしながら話しかけた。

「うん、ちょっとね……」

 珍しく憂鬱な顔をしているので、なんだか楽しくなってきたのだ。

「さっきのね、授業のことなんだけど」
「さっき? 理科だから……なに、分からないところでもあったの? 珍しい」
「ううん、そうじゃないんだけどね」

 なんだか深刻そうだ。
 アリサはますます興味が湧いてきた。なのはの"深刻"ってのがどんなものか。

「引力って言ってたでしょ? 引き付ける力っていうの」
「ええ、そうね。二つの物体の間に働く引き合う力のことよ。なに、それがどうかしたの?」
「うん。お互いを近づけようとする力だよね」
「授業で言ってたのは、万有引力のことだけどね」

 なにを言いたいのか、さっぱり要領を得ない。
 けれどそれぐらいでアリサの興味は削がれたりしないのだ。むしろ、余計に楽しくなってきた。

「教科書には――この宇宙においてはどこでも全ての 物体は互いに gravitationを及ぼしあっている、て書いてあるんだ」
「私の教科書にも同じことが書いてあるわよ」

 教科書の該当部分を指でなぞった後、なのははアンニュイな雰囲気と共に、視線を外へ投げかけた。

「ねえ、アリサちゃん」
「な、なによ」
「……はあ」

 ちょっとだけ、風向きが変わってきた……ような気がアリサはしていた。

「い、言いたいことがあるなら、はっきり口にしたほうが良いわよ。誰しも察しが良いわけじゃないし、そうじゃなかったとしても、すっきりするわよ?」
「……うん。そうだね。ありがとう、アリサちゃん」

 返事はしたものの、また直ぐに外を向いてしまった。
 最初はからかうつもりでいたけれど、若しかしたら、本当に深刻な悩みでもあるかもしれない。
 どうしよう――しかし、こういうときに限って、彼女の頭脳は上手く働いてくれなかった。
 アリサは、マジで早く誰か帰ってきてくれないか。こういうとき役に立たなそうなフェイトでも良いと、祈るような気持ちでいた。
 その祈り――随分安い――は、直ぐに届いた。

「なのは、アリサ。どうしたの?」

 珍しくアリサが一番に返事をした。
 待ち望んでいたのもあるし、なのはが依然として外ばかり見ていたのも手伝った。
 彼女の声のトーンが普段より高かったものだから、フェイトはちょっと面食らっているように見えたが、戸惑いつつも話を聞いてくれた。。

「いや、実はねフェイト……」
「なのはのこと?」

 いやあ、よくお分かりで。まーさーに、その通りです。
 皮肉抜きでそう言いたくなった。
 しかし、アリサは気づいていない。
 フェイトがなのはの様子が変だと気づけたのは、自分の様子が変だったことが原因だということに。

「どうしたの、なのは」
「ああ、フェイトちゃん」

 まとう空気が色濃くなる。
 いっつもフェイトがいれば、ふわふわピンクの空気を振りまくのに――アリサは悪態をつくことなく、マジで心配になってきた。

「あのね。この宇宙に漂う大小様々な星たちは、みんなお互いに引き合っているんだって」
「うん。さっきやったね」
「太陽みたいに大きな星は、その力がより強いんだって」

 突拍子もない話に、よく平然と頷けるものである。
 アリサは皮肉なしで感心していた。

「だからね。私、考えたんだ」
「なにを?」
「――私にとってのフェイトちゃんは、太陽なんじゃないかって」
「はあ!?」

 もちろん、最後のはアリサである。

「なのは……」
「フェイトちゃんが惹きつけて止まないのは、きっと私の太陽なんだからなんだよ!」

 しっかりと両手でフェイトの手を握り締めるなのは。目は真剣そのものだ。

「そ、そそそそれを言うなら!」
「フェイト、付き合わなくても良いわよ……」
「それを言うなら! なのはは私のブラックホールだよ! もう、離れられないもん!」

 抱きっ! フェイトはなのはを抱きしめた。

「フェイトちゃん……!」
「なのは……!」

 見つめあう二人。
 隣で砂を吐いているアリサ。
 その口からは、もう文句すら出てこなかった。

「つ、付き合いきれんわ……」
「おやおや。日の高い内から熱々やねえ」
「ホント。焼けちゃうね」
「ハハハ。ほんまやね」

 いつからいたのか、はやてとすずかが余裕の表情で状況を楽しんでいる。
 もっちろん。アリサが面白いわけがない。

「……よく付き合えるわね」
「そう? 毎回毎回、飽きもせんと話を聞いたげるアリサちゃんこそ尊敬するわぁ」

 ニヤニヤ。
 はやてに全部を見透かされているようで、アリサは居心地が悪く、ふん! と顎を逸らすことしか出来なかった。

「まあ、なんにせよ? 私の太陽や!って例えはエエとして、私のブラックホールやっていうのは、ちょっとどうかと思うよ、フェイトちゃん?」
「そうだね。言葉の響きもなんか今一だもんね」
「フェイトちゃんは、どっちか言うと、お月様って感じやけどねえ」
「……そういう問題じゃないわよ」

 アッハッハ、と笑うはやてにすずか。
 見つめあい、二人きりの世界に浸りきっているなのはとフェイト。
 アリサは、私ってば人付き合いが良いなあと、自虐的に笑うしかなかった――

「……なんてね! そんな物分りの良い人間じゃないわよ私は!」

 一周して物分りが良いのを辞めたアリサは、果敢になのはとフェイトに挑んでいくのだった。



 


 

===おしまい。


 

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